開業医から「医師不足地域」の勤務医へ

コロナ禍からの地方移住

開業医から「医師不足地域」の勤務医へ

呼吸器内科医鈴木 建(仮名)さんの場合

開業医から「医師不足地域」の勤務医へ

鈴木 建さん(仮名)さん
1995年に関西地方の国立大学を卒業後、研修を経て地元である首都圏の大学医局へ入局。医局派遣で関連病院や大学病院、総合病院の呼吸器内科に勤務。2004年、自身のクリニックを開業するも、コロナ禍のあおりを受けて閉院。生活の安定を求めて現在の地方病院へ転職。50歳代、現在は病院のある近県に単身赴任中。

 自身のクリニックを開業し、充実した生活を送るも、新型コロナウイルスの出現で状況が一変。コロナ禍のあおりを受けて患者数が激減、経営難に陥った。いつ患者が戻るか分からない生活に不安を覚え、閉院を決断する。クリニックの閉院にコストがかかることから、年収の確保を優先して、経営の安定した地方病院への転職を決めた。


—— 転職の理由を教えてください。

 開業医として10年強、順調に経営していました。競合の多い立地だったので苦労しましたが、うまく棲み分けができていたと思いますし、地域の方にも認めていただいたと自負しています。スタッフにも恵まれ、当然自分のクリニックですので愛着もありました。

 風向きが大きく変わったのが新型コロナウイルスの流行です。少しずつ外来数が減り始め、ピーク時は前年90%減にまで落ち込みました。一度目の緊急事態宣言によって感染者数は大幅に減ったものの、患者さんは戻って来られませんでした。

 朝から受付終了まで誰も来ない、ということもありました。スタッフも不安だったと思います。先行きの見えない事態に、眠れない毎日を過ごしました。そして、たまに来られる発熱患者さんのための感染対策にも神経をすり減らしていました。

 ご近所にある他科のクリニックが続々と休院・閉院されていきました。私のクリニックも赤字です。将来への不安(感染症への不安もあったと思います)からスタッフも次々に退職するなど、心の折れることばかりが続きました。

 「いずれコロナが落ち着くはずだから」と意地のみで経営を続けていましたが、資金の壁が迫ってきます。たとえ状況が落ち着いても、従来の患者数が戻ってくる保障はなく、いずれ限界が訪れる…

 断腸の思いではありましたが、今やるべきは愛着のあるクリニックを守ることよりも、私の家族の生活を守ることだ!と転職活動を開始しました。

—— 転職活動はどのようにされたのですか。

 正直、自分が転職するなど思ってもいなかったので、不慣れである自覚はありました。そこで、まずは手当たり次第、ネット上にある医師紹介会社へ登録し情報収集しました。以前、看護師や代診の医師の方をお願いした経験があって、数は多いほうが確実なのではないかと考えたのです。

 最初のうちは、あらゆる会社から電話やメールが殺到し、どの会社と話しているか解らなくなりました。ただ、私の希望条件が難しかったのか、連絡してくれる会社は減っていきました。最後まで諦めずに付き合ってくれたのはメディカルキャストさんだけで、希望条件に沿う病院へ就職することができました。

—— 転職にあたって設定した条件は?

 高めの給与条件、都心から通勤圏内であること、クリニックでの経験を活かせることなどです。多くの条件を出したと思います。特に給与に関しては、自分の都合なので申し訳ないと思いつつ、譲れませんでした。一部残っていた残債を片づけないといけませんし、可能であれば家族の生活水準を落としたくない。

 色々な転職サイトを見て、給与等の相場を調べていましたので薄々気が付いておりましたが、案の定、全ての紹介会社から「首都圏には(私の条件を満たす)求人がない」と言われました。

 それならば医師不足の離島などに行けば何とかなるだろうと、考えました。給与条件さえ満たせば、遠い所へ行くのも仕方ない。そこで離島・へき地に強い(と書かれている)メディカルキャストの担当者に相談しました。この頃は正直、すぐに見つかると思っていました。

 メディカルキャストの担当者は丁寧に、私のイメージと現実の相違について説明してくれました。また、開業医経験者を敬遠する医療機関も一部あることや、コロナ禍の求人への影響など、正確な現状を伝えてくれました。

 厳しい話ばかりで辛かったですし、すこしうんざりしました。ただ、この担当者が私の現在、そして将来について真剣に考えてくれていることは伝わってきました。ここから担当者と一緒に考え、動いていくことになります。

 私と同様、いや、もっと過酷な事情を抱える医師の方も、全国中にたくさんいらっしゃる。好条件の求人ほど競争相手が多く、ネットに出た求人も翌日には埋まっていく。私の希望金額に満たない求人でも、首都圏に近いところからなくなっていく…

 転職を甘く考えていたと気づきました。候補先すらなかなか出てこない。候補先を作っても、今度は面接までたどり着けず。おそらく給与条件が理由で落とされたのだと思います。

 時間だけが過ぎ苦戦を重ねている折、担当者からある地方の医療機関を紹介されました。「医師不足地域」にある病院でした。

 医師不足地域といっても人口は多く、規模の大きな便利な街です。競合する医療機関が少なく、求人先の経営状態は安定しているとのことでした。書類審査を経て、初めて希望の給与条件を満たしてくれ、面接へ進むことになりました。

 面接で初めてその土地にお伺いしました。不安は大きかったのですが、週末を利用して都内へ戻ることはできそうなこと、生活する上での不便はなさそうだったことから、この街で仕事することを決断しました。

 給与という「背に腹は代えられぬ」事情があったことは事実ですが、理事長先生はじめ、勤務医の方やスタッフさんが心から歓迎してくれたことに感動したことが最大の理由です。クリニック時代の経験も高く評価していただきました。

—— 転職してみていかがですか?

 新しい職場での試行錯誤は今も続いていますが、色々なストレスから解放され、医療に集中することができています。スタッフは親切ですし、患者さんも穏やかな方が多い。同僚の先生方も「外様」である私のやり方を尊重してくれますし、なぜここが医師不足地域なのか理解できないほどです。

 平日は単身赴任、金曜の夜に東京へ戻り週末は家族で過ごす、というスタイルですが、それほど苦にならないですね。二度目の緊急事態宣言が出てからはビデオ通話で家族と話したりしています。

 開業医時代も会合等の「付き合い」で深夜にしか自宅に戻らないことが多かったので、息子からは「違いがわからない」と言われました(笑)。妻をはじめ家族も、この街を気に入ってくれたようで、よく遊びに来てくれます。

 開業して、ここまで順調にきていたのに…という思いは今でもあります。ただ、今の生活も性に合っているのかな、と思っています。大きく世の中を変えたコロナ禍にあって、被害は最小限で済んだのかも、運が良かったとも。

 先が見えない状況が続く中、住民の方から歓迎され、金銭的な不安から解放され、医療に専念することができている、コロナ禍がなければ、おそらく来ることすらなかった街で。

 つくづく人生は解らないもんだなと思います。

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